60代以降のための
予防接種
感染症から身を守る方法の一つに、予防接種があります。予防接種は、一般的に小児を対象としたワクチンが注目されがちですが、大人にとっても重要な感染症予防の手段の一つです。
大人の健康の維持と家族の保護につながります。ここでは、主に60代以降のシニア世代に推奨される予防接種について説明します。
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感染症から身を守る方法の一つに、予防接種があります。予防接種は、一般的に小児を対象としたワクチンが注目されがちですが、大人にとっても重要な感染症予防の手段の一つです。
大人の健康の維持と家族の保護につながります。ここでは、主に60代以降のシニア世代に推奨される予防接種について説明します。
【編集協力】杏林大学医学部付属病院 感染症科
臨床教授 倉井 大輔 先生
日本では、1948年に予防接種法が制定され、予防接種が始まりました。
1976年の改正を経て、1994年の改正予防接種法では、定期接種に課せられた「義務接種」が「努力義務」へと変更されました。
これにより、集団での接種から、個人が接種の意義とリスクを理解して接種する方向へと転換されました。
また、当時の定期接種の対象は主に小児でしたが、定期接種から外されていたインフルエンザによる高齢者の肺炎の併発や死亡が社会問題化しました。
それを受けて、2001年の予防接種法の改正では、成人を対象として初めて65歳以上の高齢者および60~64歳のハイリスク者を対象にインフルエンザワクチンの定期接種が導入されました。
その後、2013年にも日本と先進国との「ワクチン・ギャップ*」解消に向けた改正が行われました。
高齢者やハイリスク者を対象とした定期接種としては、2014年に肺炎球菌ワクチン、2024年に新型コロナワクチンが加わりました。
*日本国内で流通しているワクチンが、諸外国と比べて少ないという状況
成人を対象とした予防接種の施策は広がりつつありますが、小児の定期接種に比べると、成人に対する予防接種は努力義務や接種勧奨がないため、ワクチンによる感染症予防が自己判断と責任に任される傾向があります。
60代以降の成人にも必要なワクチンには、以下のものがあります。
現在の健康状態や感染リスクを考慮し、適切なワクチンを接種することが重要です。
例)インフルエンザ、 肺炎球菌、 新型コロナ
例)インフルエンザ、 肺炎球菌、 新型コロナ、髄膜炎菌、B型肝炎、 帯状疱疹、 RSウイルスなど
例)風しん、破傷風など
例)A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、破傷風、黄熱、麻しん風しん、髄膜炎菌、日本脳炎、ポリオ、ダニ媒介性脳炎、腸チフスなど
(渡航先・用途・期間により異なる)
予防接種には、国が法律で接種を推奨している「定期接種」と、予防接種法には規定されていない場合や、定期接種のワクチンを対象年齢以外で受ける場合の「任意接種」があります。
さらに定期接種には、集団予防に重点を置き予防接種を受ける努力義務がある「A類疾病」と、個人予防に重点を置いた努力義務のない「B類疾病」の2種類があります。定期接種は原則として自己負担はありませんが、60代以降のシニア世代が受けられる定期接種はB類疾病です。B類疾病の定期接種は、一部自己負担で公費助成を受けることができます。
また、接種したワクチンがわからなくなることがあるため、接種を受けた際にはワクチンの種類や日付を記録し、接種歴を確認できるようにしておきましょう。
インフルエンザ*1
肺炎球菌感染症*2
新型コロナウイルス感染症*3
*1,*3 以下にあてはまる人は定期接種を受けられる
65歳以上の人
60歳~64歳で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限されている人、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)で免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人
*2 これまでにこのワクチンを接種したことがなく、以下の①、②にあてはまる人は定期接種として1回接種できる
65歳の人
60歳~64歳で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限されている人、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)で免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人
任意接種の疾病 (60代以降が対象)
帯状疱疹*
RSウイルス感染症
* 50歳以上の人、または帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の人も接種できる
定期接種(B型疾病)の疾病(定期接種対象疾患で対象者の枠外で行うもの)
インフルエンザ
肺炎球菌感染症
新型コロナウイルス感染症
基礎疾患に関連した疾病
髄膜炎菌
B型肝炎
など