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RSウイルス感染症
Q&A

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質問に答えてくれたのは

杏林大学医学部付属病院
感染症科 臨床教授
倉井 大輔 先生

略歴
1998年 東北大学医学部卒業
1998年 神戸市立中央市民病院・初期研修
2000年 東京都立駒込病院・後期研修
2003年 杏林大学医学部付属病院 呼吸器内科
2017年 同、講師
2018年 杏林大学医学部付属病院 感染症科 准教授
2021年 同、臨床教授
主な学会活動
日本内科学会
日本呼吸器学会
日本感染症学会(評議員)
日本化学療法学会

RSウイルス感染症の流行

Q
RSウイルス感染症はいつ流行しますか?
A
流行のピークは年度や時期、地域によって異なりますが、1年を通して流行する可能性があると考えられています1)。RSウイルス感染症の最新流行情報について、詳しくは

JIHS国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト

で確認することができます。
Q
大人もRSウイルスに感染することがありますか?
A
RSウイルスは乳幼児だけでなく、大人も感染することがあります。通常、健康な人はRSウイルスに感染しても軽症ですみます。そのため、本人も気づかずに感染源となって周囲に感染が広がることがあるので注意が必要です。高齢者、慢性の基礎疾患がある人、免疫機能が低下している人がRSウイルス感染症にかかると肺炎などの合併症を引き起こすこともあります2)

RSウイルス感染症の予防

Q
RSウイルスはどのように感染しますか?
A
RSウイルス感染症の感染経路は、感染者の咳やくしゃみなどのしぶきに含まれるウイルスを吸い込むことによる「飛沫感染」と、ウイルスがついた手指や物(ドアノブ、手すり、おもちゃなど)を触ったりすることによる「接触感染」です2)
Q
RSウイルス感染症にかからないためにはどうしたらいいですか?
A
RSウイルスの感染を防ぐためには、「飛沫感染」、「接触感染」への対策を行い、ウイルスに接触する機会をできるだけ減らすことが大切です2)。60歳以上の方は予防接種という選択肢もあります。

RSウイルスに感染したら

Q
大人がRSウイルスに感染すると、どのような症状が出ますか?
A
通常、健康な成人はRSウイルスに感染しても軽症で、多くは風邪のような症状で自然軽快します3)。一方で、高齢者や基礎疾患のある成人では、RSウイルスが肺炎などを引き起こすこともあります3)
Q
乳幼児がRSウイルスに感染すると、どのような症状が出ますか?
A
通常は、RSウイルス感染症は大人と同様で、多くは軽症ですみますが、初感染乳幼児の場合約20〜30%で気管支炎や肺炎などの下気道症状が出現することがあります4)
Q
インフルエンザや新型コロナウイルスに感染した場合の症状と違いはありますか?
A
RSウイルス感染症では、4~5日の潜伏期間を経て鼻水、咳などの上気道の症状や発熱などの症状が数日続きます。多くの方は軽症ですみますが、一部の方は、喘鳴、呼吸困難などの症状が出現し、回復には数日~1週間ほどかかると報告されています。場合によっては、細気管支炎、肺炎へと進展していきます2)

一方、インフルエンザは1~3日の潜伏期間を経て高熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現われ、咳、鼻汁などの上気道の症状がこれに続きます5)。新型コロナウイルス感染症は2~7日(多くは2~3日)の潜伏期間を経て、発熱、呼吸器症状、倦怠感、頭痛などの症状が現れます6)

いずれも呼吸器感染症であり、一般的に似ている症状が多くみられるため、症状のみによる判別は難しいことが多いです。医師の判断により、各種検査を行うこともあります。
Q
RSウイルス感染症にかかったら、いつ受診するのがよいですか?
A
RSウイルス感染症は発熱、鼻水、咳など軽い風邪のような症状から始まりますが、しだいに咳がひどくなる、喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒューとした呼吸音)が出る、呼吸困難になるなどの症状に気づいた場合には、早めに受診してください7) 。特に高齢者、慢性の基礎疾患がある人、免疫機能が低下している人、あるいは乳幼児の場合は注意が必要です。
Q
RSウイルスに感染した場合、保育園などの集団施設へはいつから登園可能になりますか?
A
厚生労働省(こども家庭庁)が作成した「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」によると、RSウイルス感染症は医師の診断を受け、保護者が登園届を記入することが考えられる感染症の1つです。RSウイルス感染症にかかった場合の登園の目安は、「呼吸器症状が消失し、全身の状態が良いこと」とされていますが、登園の時期については医師とご相談ください7)
Q
RSウイルス感染症に対する特効薬はありますか?
A
現在、乳児ではRSウイルス感染症の発症を抑えるお薬がありますが、成人ではRSウイルス感染症に対する特定の治療法はありません。そのため、基本的には症状を和らげるための対症療法が行われます2)
  • 軽症の場合:市販の解熱鎮痛薬、水分補給など
  • 重症の場合:必要に応じて酸素投与や人工呼吸器の使用
Q
RSウイルスに感染した場合、他の人にうつさないよう、何日注意すればいいですか?
A
RSウイルスの感染力は、通常、3~8日間持続すると考えられていますが、高齢者の場合には、免疫機能の低下からRSウイルスがより長期間にわたって体内に留まりやすく、咳などで他の人にうつす可能性があることがありますので、症状のある間は感染を防ぐための対策が大切です9)10)
Q
RSウイルス感染症に一度感染すればまた感染することはありませんか?
A
RSウイルスは、麻疹(はしか)や水痘(水ぼうそう)などのウイルス感染と違い、一度感染しても免疫が十分に得られません。そのため、RSウイルスに一度感染した後も、生涯にわたって何度も感染と発症を繰り返します2) qa_02
Q
RSウイルス感染症は、乳幼児や高齢者以外でも合併症を引き起こすことはありますか?
A
喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心疾患、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)などの慢性の基礎疾患がある人や、免疫機能が低下している人の場合、RSウイルスに感染した場合は、肺炎などの合併症を引き起こすこともあります2)3)11)12)13)
Q
RSウイルス感染症では、何に注意したらいいですか?
A
RSウイルス感染症は、鼻水、咳などの上気道の症状や発熱で始まり、多くの方は数日で回復しますが、一部の方では下気道の症状が現れます8)。咳がひどくなる、喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒューとした呼吸音)が出る、呼吸困難となるなど下気道の症状に気づいたら、早めに医療機関を受診するようにしてください。
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  • 参考文献
  • 1)病原微生物検出情報(IASR). 43(4), 79-81, 2022
  • 2)厚生労働省: RSウイルス感染症Q&A(令和6年5月31日改訂) [https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/rs_qa.html, 2025年4月10日確認]
  • 3)Centers for Disease Control and Prevention (CDC): RSV in Older Adults [https://www.cdc.gov/rsv/older-adults/index.html, 2025年4月10日確認]
  • 4)国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト: 感染症発生動向調査からみる2018年~2021年の我が国のRSウイルス感染症の状況[https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/rs-virus-m/rs-virus-idwrs/11487-rsv-20220916.html, 2025年4月10日確認]
  • 5)日本感染症学会: インフルエンザ(季節性) [https://www.kansensho.or.jp/ref/d04.html, 2025年4月10日確認]
  • 6)新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き 第10.1版 2024/4/23 [https://www.mhlw.go.jp/content/001248424.pdf, 2025年4月10日確認]
  • 7)堤裕幸. ウイルス. 55(1), 77-84, 2005
  • 8)こども家庭庁: 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版). p63
    [https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/cd6e454e/20231010_policies_hoiku_25.pdf, 2025年4月10日確認]
  • 9)Centers for Disease Control and Prevention (CDC): How RSV Spreads [https://www.cdc.gov/rsv/causes/?CDC_AAref_Val=https://www.cdc.gov/rsv/about/transmission.html, 2025年4月10日確認]
  • 10)国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト: RSウイルス感染症とは [https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/topics/040/index.html, 2025年4月10日確認]
  • 11)Branche AR. Et al.: Clin Infect Dis. 74(6),1004-1011, 2022
  • 12)National Foundation for Infectious Diseases (NFID): Call to Action: Reducing the Burden of RSV across the Lifespan [https://www.nfid.org/resource/call-to-action-reducing-the-burden-of-rsv-across-the-lifespan/, 2025年4月10日確認]
  • 13)Ivey KS. Et al.: J Am Coll Cardiol. 71(14), 1574-1583, 2018
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