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大人のRSウイルス
感染症

大人のRSウイルス感染症

RSウイルス感染症は生涯を通して再感染を繰り返します1)

ここでは、大人のRSウイルス感染症について、注意すべき点を説明します。

大人のRSウイルス感染症の症状

通常、健康な成人はRSウイルスに感染しても軽症で、多くは風邪のような症状で自然軽快します2)

特に気をつけたほうがいいのはどんな人?

高齢者、喘息、COPD、心疾患などの慢性の基礎疾患がある人、免疫機能が低下している人の場合、RSウイルスに感染した場合は、肺炎などを引き起こすこともあります2)

  • 高齢者高齢者
  • 慢性の基礎疾患がある人慢性の基礎疾患が
    ある人
  • 免疫力が低下している人免疫機能が低下
    している人**

**病原体に対する抵抗力が弱まり、感染症などにかかりやすくなっている状態

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/meneki-rouka.html

高齢者にとってRSウイルス感染症はなぜ重要?

RSウイルス感染症によって、高齢者が入院、死亡にいたることも報告されています2)

年間のRSウイルス感染症による発症・入院・死亡(日本・成人・推定値)3)

年間のRSウイルスによる負荷(米国・成人)
年間のRSウイルスによる負荷(米国・成人)
RSウイルスは高齢者における入院、死亡の<br>主な原因の1つ

入院・死亡に
至ることもあります

調査方法の詳細

  • 方法:
  • 60歳以上の成人におけるRSウイルス関連急性呼吸器感染症の発症率を検討した研究報告等から21研究データを用いてメタアナリシスを行い、60歳以上の成人におけるRSウイルスによる急性呼吸器感染症発症率、入院率、院内死亡率の統合推定値を算出し、日本の人口統計を利用して日本における60歳以上の疾病負担を求めた。
  • 本研究の限界:
  • RSウイルスによる疾病負担の推定範囲は試験毎に異なり広かった。RSウイルスによる疾病負担の年齢で階層化するデータが不足し、年齢区分が一様ではなかった。データの大半が都市部の学術的な環境における集団データであり、全国的なものではない可能性がある。院内死亡率は実際のRSウイルスによる死亡者数とは異なる。すべての死亡が報告されている。在宅療養等によりRSウイルス感染の正確な把握は難しい。バイアスリスクの評価をしていない。本メタアナリシスは、高所得国で実施された試験を対象としており、一般化するにはデータが不足している。高齢者のRSウイルス検査が定期的に実施されていない。高齢者はRSウイルスに感染しても分かりにくい。RSウイルスに関する症例定義を用いた調査がない。

調査方法の詳細

  • 方法:
  • 60歳以上の成人におけるRSウイルス関連急性呼吸器感染症の発症率を検討した研究報告等から21研究データを用いてメタアナリシスを行い、60歳以上の成人におけるRSウイルスによる急性呼吸器感染症発症率、入院率、院内死亡率の統合推定値を算出し、日本の人口統計を利用して日本における60歳以上の疾病負担を求めた。
  • 本研究の限界:
  • RSウイルスによる疾病負担の推定範囲は試験毎に異なり広かった。RSウイルスによる疾病負担の年齢で階層化するデータが不足し、年齢区分が一様ではなかった。データの大半が都市部の学術的な環境における集団データであり、全国的なものではない可能性がある。院内死亡率は実際のRSウイルスによる死亡者数とは異なる。すべての死亡が報告されている。在宅療養等によりRSウイルス感染の正確な把握は難しい。バイアスリスクの評価をしていない。本メタアナリシスは、高所得国で実施された試験を対象としており、一般化するにはデータが不足している。高齢者のRSウイルス検査が定期的に実施されていない。高齢者はRSウイルスに感染しても分かりにくい。RSウイルスに関する症例定義を用いた調査がない。
ひとくちメモ
  • 基礎疾患のある人、高齢者の方は、RSウイルス感染症の予防について学ぶとよいでしょう。
  • ひとくちメモ

RSウイルス感染症の入院率比

基礎疾患のある人は、その基礎疾患のない人に比べて、RSウイルス感染症の入院率比が高いことが報告されています4)

基礎疾患のない人と比較したRSウイルス感染症による入院率比(米国・60歳または65歳以上)

基礎疾患の種類 地域 入院する可能性
ニューヨーク市 ロチェスター
喘息のある人 2.27
2.52
高くなる(65歳以上)
冠動脈疾患のある人 3.75
6.46
高くなる(65歳以上)
糖尿病のある人 2.35
6.44
高くなる(65歳以上)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)のある人 3.51
13.41
高くなる(65歳以上)
うっ血性心不全のある人 5.405.86 3.997.63 高くなる(60歳以上)

Branche AR. et al.: Clin Infect Dis. 74(6),
1004‐1011, 2022より作表

※喘息、冠動脈疾患、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、うっ血性心不全

†調査対象地域の集団で、各基礎疾患を有する被験者とその基礎疾患のない被験者の入院率を比較した比率

‡狭心症、心筋梗塞など心臓に血液を供給する冠動脈で血液の流れが悪くなり、心臓に障害が起こる病気の総称 [https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-006.html]

調査方法の詳細

  • 対象:
  • RSウイルス流行3シーズンに急性呼吸器疾患の症状2種以上または心肺基礎疾患の増悪によりニューヨーク州の2つの地域(ニューヨーク市とロチェスター)の医療施設3ヵ所に入院したRSウイルス感染症患者1,099例
  • 方法:
  • 前向き人口ベース調査研究。年齢層別の100,000人当たりのRSウイルス感染症入院率を算出し、基礎疾患有無別の年間RSウイルス感染症入院率を比較した。
  • 本研究の限界:
  • 本データは郊外および都市部の集団を代表しているが、米国成人集団全体ではなく、一般的な結論を導くのは難しい。基礎疾患については、自己申告および電子カルテより抽出し、その内容を確認していない。調査期間にRSウイルス感染症のアクティブサーベイランス(積極的な監視療法)を実施していないが、調査チームにより陽性患者を追加した。

インフルエンザとどう違う? RSウイルス感染症のリスク

RSウイルス感染症が重症化するリスクは、季節性インフルエンザと同程度、あるいは状況によってはそれ以上であることが報告されています5)6)7)

RSウイルス感染症または季節性インフルエンザで肺炎になった人の入院日数(平均値)5)

RSウイルス感染症による入院期間は季節性インフルエンザの約2倍との報告も

RSウイルス感染症

30.0日

季節性インフルエンザ

15.2日

5)髙橋 洋 他: 感染症学雑誌. 90(5), 645-651, 2016 [著者にグラクソ・スミスクラインから講演料を受領した者を含む。]より作図

調査方法の詳細

  • 対象:
  • 2011~2012および2012~2013の冬季2シーズンにおける16歳以上のRSV関連肺炎症例43例、インフルエンザ関連肺炎症例25例(うち入院はRSV関連肺炎症例39例、インフルエンザ関連肺炎症例23例)
  • 方法:
  • RSV感染症例の診断状況と臨床像をretrospectiveに分析し、期間中に診断されたインフルエンザ症例の病像と比較検討した。統計処理に関しては、Fisherの正確確率検定およびt検定を用いて解析を行い、ともに危険率の有意水準が5%未満の場合に統計学的に有意とした。
  • 本研究の限界:
  • retrospective studyであり、RSV群、インフルエンザ群ともに担当医が検査を施行する段階ですでに一定のSelection biasがかかっている。

入院は小児が多いにもかかわらず、死亡例の多くは高齢者

RSウイルス感染症で入院する患者の多くは小児ですが、重症化して死亡に至った患者の85%は高齢者でした8)

RSウイルス感染症による入院例と死亡例の年齢の比較8)

RSウイルス感染症で入院した患者さん

(24,345人)

入院後30日以内に死亡した患者さん

(697人)

RSウイルス感染症による入院例と死亡例の年齢の比較

8)Hamilton MA. et al.: Influenza Other Respir Viruses. 16(6), 1072-1081, 2022より作図

調査方法の詳細

  • 対象:
  • カナダ/オンタリオ州の一般集団における臨床検査データおよび医療管理データから抽出したRSウイルス感染症による入院患者24,345例(2010年9月~2019年4月)*、インフルエンザ感染症による入院患者45,749例(2010年9月~2019年5月)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染症による入院患者8,988例(2020年3月~2020年12月)
  • 方法:
  • 対象集団を感染源による3つのコホートに分類し、修正ポアソン回帰の多変量解析により、入院患者が重篤な転帰に至る潜在的な予測因子と死亡率との関連をレトロスペクティブに評価し、入院後30日間における全死因死亡の予測因子を特定した。
  • 本研究の限界:
  • ①本研究では、オンタリオ州の一般集団においてインフルエンザまたはRSウイルスの診断用検査を受けた入院患者集団に対し症例定義の検証を行ったが、検査結果による診断ではなく入院データの退院コードを用いて患者を特定したため、インフルエンザおよびRSウイルス症例の分類ミスが稀に発生している可能性がある。②本研究の定義に従って、ウイルスに起因する死亡または二次感染(ウイルスによる死亡)に関連する死亡の転帰に関するデータが得られているが、分類ミスに関してすべてのウイルスに対応する適切なアプローチがないことから、バイアスが発生するという、重要な研究上の限界がある。③妊娠、肥満、個人レベルの社会的決定要因(経済的疎外や人種差別など)など、入院医療の質およびウイルス性呼吸器感染症の罹患率に影響し、呼吸器感染症の重症度を予測する他の重要な要因に関するデータが欠如している。
  • * RSウイルス感染症による入院中における死亡者数:697例

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  • 参考文献
  • 1)国立感染症研究所: IDWR 2013年第36号 〈注目すべき感染症〉 RSウイルス感染症 [https://www.niid.go.jp/niid/ja/rs-virus-m/rs-virus-idwrc/3972-idwrc-1336-01.html, 2024年11月1日確認]
  • 2)Centers for Disease Control and Prevention (CDC): RSV in Older Adults [https://www.cdc.gov/rsv/older-adults/index.html, 2024年11月1日確認]
  • 3)Savic M. et al.: Influenza Other Respir Viruses. 17(1), 2023,e13031 [利益相反:著者にグラクソ・スミスクライン(株)の社員が含まれる。著者に本報告のデータ解析作業中にグラクソ・スミスクライン(株)がコンサルタント料を支払った者が含まれる。]
  • 4)Branche AR. et al.: Clin Infect Dis. 74(6), 1004‐1011, 2022
  • 5)髙橋 洋 他: 感染症学雑誌. 90(5), 645-651, 2016 [著者にグラクソ・スミスクラインから講演料を受領した者を含む。]
  • 6)Inoue N. et al.: Infect Dis (Lond). 57(4), 366-375, 2025
  • 7)Lee N. et al.: Clin Infect Dis. 57(8), 1069-1077, 2013
  • 8)Hamilton MA. et al.: Influenza Other Respir Viruses. 16(6), 1072-1081, 2022
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